2004年5月17日月曜日

柴崎(青閑)焼 2

新五郎は明治44年に浅草で生まれました
いまでも浅草は、江戸の名残を色濃く残した下町ですね

まして戦前や戦後の早い時期はなおさらで、「ちんや横丁」の夜店が盛り
そこはさながら、豆盆栽界同好家たちの一種のサロンのような場所であったようです

小品盆栽の父とも称される「杉本佐七」、その弟子の俳優「中村是好」、小鉢の収集と鑑定で有名な「中島通泉」
その他有名無名の盆栽愛好家が夜毎に集い、盆栽談義に花を咲かせて、かの松平伯爵ご夫妻さえも度々訪れたと聞きます

その中において柴崎新五郎の小鉢の収集鑑定家としての
信望と名声は確たるものでした

新五郎はその鋭い審美眼と、多くの名品の収集から得られた豊かな経験を基にし
自らも小鉢の製作に挑戦したのです

作風はお洒落で小粋な江戸趣味とも言うべき趣が濃く
手捻りと彫刻を多用しています

また、それら豆鉢の「仕度」にもその趣味性は遺憾なく発揮され
箱や命名、鉢単独の飾りにも様々な工夫を凝らしています


柴崎青閑作 銘「富喜」

石台と呼ばれる形の豆鉢です
牡丹の花を紋章のように中央にあしらっています

後の屏風は桐で、折りたたみ式になっています
趣味人・青閑ならではの仕掛けですね

牡丹の花は富貴草とも呼ばれ、富と気品の象徴です
その富貴を「富喜」ともじったのも、下町っ子・新五郎独特の庶民感覚だと理解できます


紫檀製の箱に右の一式が収まるように作られています



また、この紫檀製の箱の作りが見事
四面すべてが一枚板から作られており、木目が通っています

伝統的な江戸指物師の作品
こだわっていますね


手さばきのいい仕事であることが窺えます
しかし、技巧は巧みです、彼の本業は彫金の金型やであったそうです


石台型の鉢は難しい、側面から見てもバランスがいいですね
側面にも縦縞の文様が施され、細部にも神経が行き届いています


鉢裏の様子も小洒落ています、落款は「新」の丸落款です

魅力溢れた柴崎焼の魅力を堪能できましたか
これからも折に触れてご紹介しましょう

2004年5月11日火曜日

柴崎(青閑)焼 1

江戸の香りを色濃く残す下町の浅草に生まれ育ち
粋で遊び心に溢れた作風によって戦前から戦後にかけて大活躍した
柴崎新五郎(号・青閑)の柴崎焼を紹介しましょう

↓は最近入手した柴崎焼の豆鉢群です
小さいですよ、間口2cmから大きいもので5cmで、いずれも青閑の代表作といえる傑作揃いです



柴崎新五郎と彼の作品については、我々の大先輩の忍田博三郎氏によって昭和51年に上梓された
日本の陶工と小鉢「盆栽小鉢の面白味」に数ページにわたり詳しく述べられています

新五郎(青閑)は明治44年に東京浅草に生まれ
竹本・良斎・東福寺・一陽・苔州など小鉢の目利き及び収集家として名を成した人です

また家業(彫金の金型屋)と豆鉢収集の傍ら、自らも柴崎焼として豆鉢を製作しました
作風は”粋でお洒落で自由”な江戸っ子らしく、遊び心に溢れています

その粋でお洒落な精神は作品のみに止まらず
仕度(したく)と呼ばれる箱やその飾りにも存分に発揮されており

東京を中心に熱烈なファンが健在で、先日ご紹介した豆鉢の大家・窪寺一郎氏なども
数百鉢を所蔵し、青閑鉢コレクターの一人として知られています

それでは、↑の代表作を詳しく解説しながら、その魅力の謎を解いてみましょう

2004年5月10日月曜日

謎の刻印

前項で東福寺鉢の謎の刻印について「鳥」ではないかとご紹介しましたが
掲示板に、いわゆる「花押」ではないかとのご指摘がありました
(もちろん鳥であっても「花押」にはちがいないのですが、この場合は草書体の文字の花押としてお話します)

じつを申し上げると、ご指摘のとおり鑑定の当初から花押では?
という意見も強かったのです

↓のように逆さにしてみると、戦国武将の手紙などでよく見る「花押」に似ていますね
特に下の線(鳥とすると背中の部分)が直線に近いんですね、この部分も気になっていたのです

鳥とすると、足の部分の描写にやや説得力のないのは承知していましたが
花押とするも決め手ない、むずかしいところです


いずれにしても、注文主の刻印ではないかとの推測も成り立ちます
自分だけの鉢、こんな思い出で制作を依頼したのかもしれませんね


いつか謎が解けることを期待して、この項を一応終了します
面白い情報がありましたらお知らせ下さい

2004年5月7日金曜日

東福寺鉢の謎

不思議な落款を印した東福寺に出会いましたので、ご紹介します


平安東福寺作 緑釉窯変切立楕円樹盆(りょくゆう・きったち・だえんじゅぼん)

まちないなく東福寺初期(戦前)の作品であると鑑定されます
本来の釉薬である緑釉が窯変により飴色の発色をみせていいて
長い年月の使い込みにより渋さも加わり、落ち着いた深みのある雰囲気です


内側の深くまで釉薬が溶けて流れています
この釉薬の色艶や模様が楽しめるのも東福寺鉢の特徴でしょう


足はW形のやさしい感じで、切立の平凡な姿に奥ゆかしいアクセントを与えています
この辺りの細部も見逃さないように


鉢裏の落款は定番の「東福寺」、小さなハンコウ落款
画像では不鮮明ですが、実物ではハッキリと見えます


ここからがこの鉢の謎めいたところです
鉢の内側に、画像のような左右2.5cmほどのかなり大きな落款があります

東福寺鉢には複数の落款を押した鉢が多く存在しますが
このような文様じみた落款は見たことがありません

同業のこの道40年のベテランと何時間も眺めました


拡大してみると、鳥の象形文字のように見えますね
右がクチバシで左が尾のようです

魚の姿を印した東福寺鉢を見たことがあるという同好の友人はいますが
その人も、このような鳥らしい文様は見たことがないといっています

東福寺は生来の遊び心から様々な実験的試みをしたり
多様な落款を使用したりしていて、その面からも興味が持てる作家ですね

この謎めいた印しのある小鉢に対する検証は、今後の宿題になりそうです
それにしても、面白い鉢です

2004年5月6日木曜日

姫柿の実

今年の大型連休の天気は、大風が吹いたり小雨模様だったりして後半パッとしなかったですね

4月中はバカ陽気が続いたので、少しずれればよかったのに
連休に盆栽の手入れをしようと予定していた人は、きっとそう思っているでしょう

毎年のことですが、幹線道路が込むので盆栽屋は家でおとなしくお留守番
PCの具合が悪くイライラしながらもなんとか修復し、比較的静かな連休でした

さて、実成り盆栽が小さな実をつけ始めています
今日は姫柿の観察してみましょう



姫柿は雌雄異株ですから、花期に雌木の側に雄木を置くようにします
人工的に交配する必要はありません、近づけて置くだけで十分です

昨日観察してみると、すでに小さな青い実になっています
ヘタの中に隠れるようにして、かわいらしいですね

実成り盆栽全般にいえることですが、今の時期に実がついたと喜ぶのは早過ぎます
油断は禁物です

これからの一ヶ月間に注意しなければいけないこと
・水切れをおこさない
・肥料をやってはいけません
・虫害消毒を怠らない

この3点に特に注意すること、まだまだ途中で落果する心配がありますよ

実が大きくなって固まる頃になるまで、十分気をつけてください
よろしいですか

2004年5月5日水曜日

遅い芽摘み

大型連休も今日でおしまい
最後の日はあいにくの小雨模様です
締めくくりはゆっくりとお休みできるようにとの、天の神様のご配慮かな

さて、盆栽棚を一渡り見てまわると、春の芽摘みを省略した楓が目に入りました
というのもこの楓は、春の芽出しがやや遅く、その後の芽の伸びも今一だったからです

そのような盆栽は、春の芽摘みをやや遅らせてやることが
樹勢の回復につながります


ところどころの芽が上に向かって勢いよく伸び始めています
芽の伸びた分だけ根も活動しています、つまり樹勢が活発になっている証拠です

そろそろ伸びた部分の芽切りをしてもいいでしょう
いいですか、伸びた部分だけですよ


飛び芽(飛びぬけて伸びた芽)だけ切ります
もちろ指先では無理、ハサミを使います

一節の芽だけ開いてその後に伸びていない芽は、無理して摘まないようにします
かわいそうです


この芽も伸びていますね、もう少しで木質化しそうなほどです
一節残して切ります

全体で5本くらいの芽が飛び切り伸びていました
すべて芽切りをします

このように樹勢によっては芽摘みをわざと遅らせることも大切
おそらくこの楓は、今年の葉刈りも省略するでしょう

なにごとも樹勢を見ながら手入れすることが肝心です
すべての鉢に一律の手入れ方法では、ついていけない盆栽も出てきます

2004年5月4日火曜日

水切れ対策

水切れ対策に有効な二重鉢、これで夏を乗り切ろう!
発泡スチロールのお皿に数個の穴(必須)を開けます

廃品利用の場合は、よく洗うこと
塩分が残っているとたちまち盆栽たちは参ってしまいますよ

盆栽の植え土を入れ、そこへ盆栽を置けばいいだけ
少し埋めてやってもいい、簡単です


こんな感じ
人も盆栽も楽々



旺盛な盆栽は水穴からもう根が出ています
このくらいならちょうどいい、ちょっとくらい鉢の水が切れても下から吸えますね

木質化して太った根だけは切ってやります
鉢の中の根が横着して活動が鈍るからです

そく、実行!