2007年2月22日木曜日

自慢の寒木瓜

冬囲いのムロをのぞいて見ると、早くもお気に入りの寒木瓜が咲き始めています

今年はまったくの暖冬で、例年なら庭の水瓶が1cm以上の厚さに凍るのに
12月に数日薄氷が張ったきりで、とうとうこのまま春になってしまいそう

この天候の異変は盆栽人にとっていいのか悪いのか、両面が考えられますが
素直に言っちゃえば、暖かいことは楽ちんではありますね

盆栽だって口をきけるとしたら「今年の冬越しは楽ちんだったね」
そう言うにきまっています

けれど盆栽人にとって、この早すぎる春の到来に備える心構えは必要ですよ

まず、石灰硫黄合剤の散布の時期は、関東以西では、すでに過ぎたようです
すでにムロの中の雑木類は芽が動き出していますからね

雑木類の植替えも急がねばなりません
ムロ出しはまだ早いので、昼夜を問わずムロの温度を上げないように工夫しましょう

3月の彼岸を目印に始まる松柏類の植替えも、今年は早めにとっかかるつもりで
その早めの目安は、半月くらいとふんでいます

さあ、あなたも、春に向かって、ゴー、ゴー!



寒木瓜株立 樹高11×左右18cm

園芸との中間的、まだ鉢植え、といった感じのものはたくさんあるんでが
昔よりも寒木瓜の名木が少なくなった印象の盆栽界です

梅と木瓜は早春の花木として、日本人にことさらに愛されてきましたが
木瓜類は、盆栽としては形作りがしにくいせいでしょう

掲載の寒木瓜、株立ち状の自然体の樹形で
持ち込みはことさら古く、座元もしっかりしています



こんなに古いのに傷っけなしですよ



枝先もよくしまっています
枝先の蕾の膨らみに、早春の息吹きが感じられます



今年の春にはもっと小さな鉢に入れるつもりで、黄色い釉薬の輪花式の鉢を用意ずみ
早春の席飾りの一員とすれば、季節感濃く、席は見違えるように映えること請け合いです

この寒木瓜、大のお気に入りの一鉢です

では

2007年2月16日金曜日

長寿梅単幹の鑑賞

今では、小品盆栽の世界に長寿梅の単幹は多く見られるようになりましたが
そうですねー、20~30年くらい前までは長寿梅といえば株立ちと相場がきまっていました

木瓜や草木瓜(しどみ)の仲間なので樹種の性質からして当然で
現在でも普通サイズの盆栽の世界では、樹形はやはり株立ちが主流です

幹が太らない性質のため、大きな盆栽では、単幹の堂々たる模様木、望んでもこれはちょっと無理なことですね
例えば直径が5cm以上の長寿梅なんか、大盆栽であってもめったにありませんね

ですから、長寿梅の単幹といえば、これはもっぱら小品盆栽
とくにミニの世界の専売特許とも言って過言ではありません

ですから、同じ長寿梅であっても、大盆栽では株立ち状の全体の趣をはじめ
持込の枝先のほぐれや古色を味わうことになります

いっぽう単幹の場合は、根張り、幹模様、枝順など
本格的な模様木としての基本に主眼がおかれ、さらに枝ほぐれや木肌の古色感も味わえます

まさに、長寿梅に関しては、ミニ盆栽の世界は幸せな限りなのです

さて


長寿梅単幹模様木 樹高9.0cm

ベテランの愛好家が約20年、すでに基本の出来上がっていた模様木を持ち込んだもの
足元と各枝の力感がみごとですね

この長寿梅を20年間見続けてきた親しい同業者の証言では
太さは20年前とさほどは変っていないそうです


正面の拡大図

幹筋が素直で傷っけがないのが魅力です
無理な切り戻しをせず、じっくりと辛抱強く持ち込んだことがわかりますね

向かって左の足元に、昔の枝抜きの痕がありました
癒合剤を除いてみると、ほとんど肉巻きが完了していて、枝抜き後の順調な培養がうかがえます


枝先のほぐれの様子を見ます

長い持込によって、枝先は密に落ち着いて品格が感じられますね
こうなればいたずらにツンツンと徒長はしませんね、↓の若い長寿梅と見比べてみてください

枝先が徒長しないようになるまでには
バランスのとれた適切な培養管理が必要です


まだまだ摘み込みを繰り返す必要がありますね


後ろ姿にも落ち着いた風格が感じられます

2007年2月15日木曜日

山もみじ甲羅吹き

根の水洗いには電動の小型ポンプが便利
霧状から水鉄砲状まで水圧を調節できます

3万円くらいしますが、頑固な幹の汚れや根の掃除などにはもってこい
高くても元はすぐ取れる、という感じがする優れものです


弱めの水圧で充分
根と根の間の汚れた用土や腐った根をきれいに洗い流します


甲羅の元もポンプでこのようにきれいに洗います


根洗い後に真上から見たようす
汚れた表面の根はすっかり取り除かれました

こんなに根が少なくなっちゃってだいじょうぶ?
もちろんだいじょうぶ、甲羅の下の元の根がきれいなので、必ず活着します


正面から見ます
このくらいの感じまで根を追い込んでください


植え込み完了


植え込み完了の正面図

一日数回霧水をやれれば最高
植替え後は冷たい乾燥した風が大敵

春の彼岸頃にムロだしするまで
冷たい乾燥した風は絶対に避けましょう

根洗いに夢中になっていて剪定のことを忘れてましたが
ムロだしするまでにゆっくりとやることにします

剪定後の姿もご紹介しますね
では、あなたも思い切って汚れた根を洗ってみましょう

2007年2月14日水曜日

山もみじ甲羅吹き

硫黄合剤の散布については前に詳しく説明しましたね、で、ここでは省きます
さて、次の作業は根洗い


鉢から抜いてみると、末端の根は予想していたよりもきれい(黒ずんでいないことが肝心)
根が細かく分岐しよく発達しています


末端の根はきれいですが、鉢の表面の用土が黒ずんでかなり劣化していますね
ほこりや肥料の残りカスがたまってこの部分の排水が悪くなってるんです

これは根腐れの原因になります
この部分を徹底的に掃除せねばなりません

根張りと根張りの間を竹バシで突き
黒く劣化した土を落とします(もっとの大切な作業)


竹バシが根の下へ貫通するまでほぐします
根気よく!


健全な末端の根も切り詰めながら、甲羅の元が見えるまで用土を落とします
もし甲羅の元に傷があれば腐り込みの原因になりますので、治療せねばなりません


水洗いしてみると、甲羅の元には傷っけなし
ひげ根もきれいで健全な状態です

人間でいえば、内臓に疾患がないということ
これでますます元気が出てきましたよ


表面も水洗い
かなりきれいになりましたが、この程度ではまだまだ

次の項でもっときれいに掃除します
つづく

2007年2月7日水曜日

山もみじ甲羅吹き

先週の末に、親しい同業者の棚で目に留まった山もみじの甲羅吹き
見ると値札がついて、大きな文字で値段が書いてある

あれ?これって間違いじゃないの?
と一瞬思ったくらいの安~いお値段(思わずヨダレ、ホントに卑しいだから、もー)

聞いてみると、お客様が飽きたので、委託で預かっているが
一ヶ月経っても誰も見向きもしないとのこと

内心シメタと思いましたね
でも値切りのテクニックにも書いてあるように、私だって、「安いときは絶対値切れ」の鉄則は忘れてはいませんよ

「飽きたんなら、半値に交渉しておくれ」、とたちまち揺さぶりをかけて
結果は2割引で求めました

もう1割くらいは値切れる雰囲気でしたが、なにせ相手は私の息子くらいの若い二代目
それに、深追いし過ぎてこじれてもいけません、程よいところで手を打ちました

「なぜそんなに安い値段がついていたんですか?」ですって

そのお店は小品盆栽専門店なので
このサイズの盆栽は高く評価しない傾向があるんです

また、その二代目さんは目筋にかなりいいものを持っていますが
自分の好みが強いので、自分の感性には合っていないかったのでしょう

ということは、この甲羅吹きの山もみじが私の好みと感性の受け入れる範囲に入っていたということで
つきつめればこのことは、双方の盆栽業者にとって、もっとも大切なことではあります

ま、前置きはこのくらいにして、ゲットした山もみじの甲羅吹きを見てみましょう


樹高23cm×左右27cm (左右は左の枝先から右の甲羅の端まで)(甲羅の間口は約17cm)


後ろから見た姿


上方から見た姿
甲羅に傷っけがまったくなし


枝先の様子

春先芽摘みを励行せず、新芽が伸びてから切り込む、そのような管理をしてきたんですね
この山もみじにとって、枝ほぐれはこれからの最大の課題となります


枝先の様子

枝先が無秩序です
手入れの基本である芽摘みと葉透かしがなされていなかったことがわかります

こんごこの山もみじ甲羅吹きには、石灰硫黄合剤散布、枝先の整理、植え付け角度の変更などを行います
続編は順次「盆栽つれづれ草」でお伝えしますので、楽しみにしてください

では