2009年4月30日木曜日

山もみじの葉透かし葉切り

不朽の人気を誇る山もみじ
雑木盆栽の王様といっても過言ではありません

しかし、これほど親しみのある樹種なのに
培養面、とくに本格的な小枝作りは案外にむずかしく、盆栽人の永遠の課題ともいえましょう

春の芽だしの芽摘みが済んだと思ったら
もう葉透かしと葉切りの時期がやってきました

過去のつれづれ草で何度も紹介しているので
それらと併せてご覧下さい

            


春の芽だし時に一節残しで芽摘みを行い
第一段階として基本どうりに片葉を取り除いた状態から始めます

一対の両葉をつけてままだと、もっともっと葉が覆いかぶさったじょうたになりますね
しかし、片葉を透かしたいまの状態でも、やはりフトコロ芽に十分な太陽と風があたりません


下方よりフトコロをのぞいて見ます
フトコロをもっと明るくして日と風が入るように、作業開始です


山もみじの葉


葉の面積の約四分の一から三分の一を残して切ります
ただこれだけの作業ですから、ともかく根気だけが勝負


途中で頭部付近の前枝がちょっと長すぎるのが気にかかりました
葉透かしと葉切りにより明るくなったフトコロ、剪定も兼ねられてとても有効です


作業終了
いかがですか、まんべんなく葉切りがされていますね

フトコロの中まで日と風が入り易くなったので
胴吹き芽が生じやすく、またこれまで眠って動かなかったフトコロ芽も成長できる条件が整いました


葉落ちのときのサイズはわずかに7.5cm

どうです、明るくなったでしょ
こうやってフトコロの小枝や芽を守ることが、盆栽をいつまでも小さいなサイズに保つための必須条件ですよ


作業終了全体図

この葉透かしと葉切りにより、小枝の先に集中しがちな勢いを制御してゴツクなるのを防ぐとともに
フトコロ芽に活気を与えます

ですから、この作業を行ったものには葉刈りの必要はありません
そのため、ウドンコ病の心配もなく、非常に有効な手入れといえましょう

根気さえあれば簡単ですね
必ず実行してくださいよ!

2009年4月29日水曜日

杜松の鉢合わせ

本題に入る前に、まずは一言

五葉松や黒松などと同じく松柏類に分類される杜松ですが
寒さや乾燥を嫌う性質なので、植替えの時期には気をつけましょう

他の松柏類の多くは春の彼岸を中心に行いますが
杜松(杉も)は4月半ばを過ぎから5月半ばごろのかけてが植替えの適期です

まわりの愛好家さんを見ていると、杜松の植替え時期がやや早めの方が多いし
冬場の保護や管理を含めて、もう少し気を配ってあげたい樹種ですね

では、今日の本題の鉢合わせに入りましょう



冬の寒さや乾燥から十分に守られた杜松、春の芽だしも順調です
4月半ばまで我慢して植替えの適期となりました

枝葉の吹き込みも進み樹形もかなり充実してきました
化粧鉢に植替え、鉢との調和をはかりながら本格的な完成を目指す段階となりました

さて、鉢形と大きさのバランスに気をつけながら鉢の選定をします



盆栽の手前に鉢を置いてバランスを見ます
この場合、下に敷物を用意して新しい鉢の高低を調節します

ちなみに杜松の樹高は9.5cmで左右の幅は12cm
木瓜式(間口11.5cm)の鉢、いかがですか?

かなり大きめの感じがしますね



次は縁に縄目の紋様のある楕円鉢(間口11cm)
これはいいかなと思いながら映してみたんですが、やはり大きい感じですね

特に幹の左の空間が間が抜けた感じになってますね
そのため木と鉢に一体感と緊張感がありません

うーん、うまくいかないもんですね!?



次に輪花式(間口10cm)

大きさも釣り合うし、前回課題だった左の空間にも緊張感が出ました
間口が小さいため、一の枝の下の右の空間もきれいに見えます

輪花式は適度な重厚感があり下方がつぼんだ形状なので
植えられた盆栽の姿がすっきりと見えるんですね

合格です!!



いかがですか?

この杜松の魅力である幹筋の優雅さがさらに強調されましたね
まだ鉢がやや大きめな感じがしますが、杜松の枝葉の充実が進めばちょうどいい感じになるでしょう

鉢合わせで心がけること

★ 木と鉢に一体感が感じられるものを選定
★ 大きめの鉢を選ぶ人が多いので注意
★ 盆栽の数年後の姿も頭に入れましょう

では

2009年4月10日金曜日

黒松の植付け変更

関西方面の愛好家さんから1年ほど前に譲っていただいた黒松(樹高19cm)の古木
持ち込みは申し分なく、小枝もよくほぐれ木肌の古色感も抜群です

しかし、植付けが高すぎるため根が露出し過ぎ、足元に安定感と力強さが不足しています
植替えのたびに、根の底の追い込み不足が重なると、このような状態になっていることがよくあるんですね

樹高を短縮させ足元に安定感と力強さを出すために
思い切って根の底を追い込んでみましょう


一の枝に力があって幹筋の模様にも古木感があふれています


鉢内の根の厚みは約3.5cmです
上の白点(5.5cm)が新しい表面の目標地点

つまり、5.5-3.5=2.0cm 深植えにします
ということは、根の底を赤点(2.0cm地点)まで追い込むということですね

これはちょっとシンドイ作業ですが
思い切って実行してみましょう


作業ポイント

1 まず表面の根をごくを軽くほぐす
2 次に根の底の部分をていねいにほぐしていく
3 側面の根は絶対にほぐさない(荒治療のため根を傷めないため)


作業の中の根の底の状態
作業はまだまだ中間地点です


さらに底の部分を攻め続けます
この時点でも側面の根はほぐしていません(根を大切にしましょう)


おおよそ目的の位置まで底を攻め切ったら、ここではじめて側面の根をほぐします(重要)
活着に必要な最小限の根の量まで追い込むため、根は大切に扱いましょう

(ええ!? こんなに根を切っちゃってだいじょうぶ?)
(だいじょぶ、だいじょぶ、まかせなさい)


竹箸を根元に打ち込み、その竹箸を基点にして針金を固定にする方法
植込みにさいしては木がぐらつかないようにしっかり固定することが活着の秘訣です


作業終了

約2.0cmの樹高短縮が実現しました(樹高17cm)
いかがですか、足元の安定感と力強さが実現しましたね

2009年4月9日木曜日

もみじ芽摘みと片葉切り

早春からの植替え作業がまだ残っているのに、月日は容赦なく桜も満開を過ぎて
ムロ出しが終わったと思ったら、早くも雑木類の芽摘みの最盛期になってしまいました

アフー、盆栽人は一年中忙しい!

もみじ類の芽摘みについては、過去のつれづれ草でも詳しく触れていますが
ともかく芽摘み作業は雑木類のとってはもっとも大切なことなので、今日も軽く触れておきましょう

過去の手入れはこちら  1   2   3   4 



樹齢は約20年で樹高8.0cmのミニサイズの山もみじ
今年の早春に植替えました

長い持込により、枝先もかなり落ち着いてきたので
枝先を少しずつ追い込み、繊細さを目指す段階になってきました

そのためには、勢いが内側のフトコロ芽に向うように
外側の芽をしっかり制御しなければなりません



先端の芽がほぐれ始めて葉にならないうちに、ピンセットで摘み取ります
残すのは原則として1芽、伸ばしたい芽や勢いのない芽のみ2芽を残します



ハサミで切る段階では遅すぎです
ピンセットで軽く摘める時期に行います(必須)



最初の芽摘みから2日が経過
たった2日間でも芽の状態はかなり進んでいますよ



見落としがないように、枝全体をくまなく摘みます



残した1芽には2枚の葉がついていますね
その片方の葉も摘んで、枝の先端に勢いが集中するのを防ぎます(片葉切り)



この作業により、眠ったままのフトコロ芽が吹っ切ってきます
追い込みにはこの短いフトコロ芽が重要な役目を果たしてくれます

さあ、大急ぎで芽摘みをしよう!!

2009年4月8日水曜日

真柏取り木(結束式)

小品の愛好家の多くは、ベテランになるほどに自らの好みのサイズを決めて楽しんでいます

20cm、18cm、15cm、12cm、10cmなど、それぞれに課題を設け
そのサイズの中で最大限の技術力を発揮すべく、日夜努力しているわけですが

近年の小品盆栽界ではサイズの短縮化が加速度的に進んでいます
ベテランの愛好家にも、1ランクか2ランク小さめのサイズに移行するひとが目立ちはじめ

小品盆栽を趣味にしようとするこの世界に入ってくる新人さんたちでは
10~12cmサイズを好むひとが目立っています

この現象の理由はいろいろ考えられます
まずミニサイズの際立った魅力や住宅事情などが考えられますが

やはりなんといっても、近年の盆栽技術の発達はめざましく、10cmサイズのミニ盆栽であっても
大きな盆栽に劣らない迫力や古色感が表現できるようになったことがあげられます

さてそこで今日は、より小さく、より優れた迫力、を求めて
真柏の取り木の勉強をいたします

施術の適期は1月から5月まで
冬眠期から入梅前の成長期にかけての長い期間に可能です


あと2cmほど樹形を短縮すれば10cm以内のミニサイズになる真柏素材
取り木により、樹形の短縮と足元の迫力を同時に実現する計画です


後ろ姿


白線が計画する新しい足元の位置
芯の予定地点(白丸)までは8cmです


取り木予定位置に細釘で印しをつける
結束する針金がずれないために便利な方法です


釘に沿って針金(1.5~1.8mm)を巻く


ヤットコで針金を締める
針金がやや表皮に食い込む感じ


事前に打っておいた釘のおかげで
幹に凸凹や傾きがあっても、このとおりピッタリと結束できます

つづく