2014年10月22日水曜日

舞姫・挿木苗の育て方ワンポイント

挿木の幼苗を育て、徐々にミニ盆栽に仕上げていく楽しみは
経験した盆栽人でないとわからない、と断言できるほどのものがあります

第一に、お金がかからないから、まったくのお得感あり(笑いごっちゃない、切実な問題ですね)
第二に、自らの手で、切り捨てるはずの小枝に命を吹き込む作業から始めるので
ひとしおの愛着感を経験できる

そして第三に、取木にも言えることですが、これらを経験することによって
植物の命の秘密、つまり生理についての知識が深まって、盆栽の培養におおいに勉強になる

さて、前おきはこのくらにして
舞姫の挿木苗の育て方のポイントの勉強、始めましょう


前列左は舞姫当歳(とうさい)(一年生)苗、寸法は10~15cm
今年の3月に挿木をしたものです

その右側が舞姫二年生苗、寸法は30~40cm
昨年の入梅時期に挿木したもので、勢いよく繁茂しています

後列中央のの仕立て鉢に入った2鉢が舞姫三年生苗、寸法は50~60cm
一昨年の入梅時期に挿木をし、今年の春に仕立て鉢に植え込んだものです

挿木をする時は10cmくらいの穂木は、その年には数cmくらいしか成長できませんが
次の年には30~40cmの立派な二年生苗となっているのが印象的ですね


今年の3月中旬に挿木をした苗
活着率はおおよそ70%くらいの感じです

暑い夏が終わり秋口になって再度新葉が展開し始めたのは
過ごし易い気候が訪れたので、土中でも新しい根が活動し始めた証拠で、とても喜ばしい現象です


さてここで改めて、今年の春に挿木をした当歳苗(とうさいなえ)と
隣の二年生苗の成長ぶりを比較して見ましょう


当歳苗は背の高いものでやっと15cmほどで
状態としては、暑かった夏を乗り切り、秋口になってやっと新しい葉が展開したところですが

言うなれば、まだ将来の展望は見えず、とにかく生き抜くことに精一杯の感じですね
それに、厳しい冬の到来も一刻一刻近づいていて、ぐずぐずしているわけにはいられません


比べて二年生苗の方は、いかがですか、この勢いのいいこと!
背丈は30cmを超えて40cmにもなっています

太さだって、ほんのマッチ棒ほどの当歳苗に比すると
すでに4~5mmあって、しっかりと木質化して頼もしい限りです

よろしいですか、みなさん!

たった一年間ですよ
一年間でこれだけ成長させることができるんですよ

その秘訣を勉強するのが今日の課題だったのです

そして、秘訣はたった一つ

★挿木当歳苗は、二年目(翌年春)には植え替えず、挿木したままで育て
三年目になって初めて一本ずつ仕立て鉢に移して独立させる

理由は

発根した当歳苗を翌春に植え替えても、根付くのに精一杯で
この段階では、成長するためのエネルギーが、根にも幹にも養分が十分蓄積されていないのです

もしも、無理をして二年目の春に仕立て鉢に移すと
1~2年間は現状維持が精一杯で、じっとウズクマッテしまい、かなり成長が遅れてしまいます

もっとも、それを逆手にとって年月をかけるのを惜しますに
味のある超ミニに挑戦している愛好家さんもたくさんいらっしゃいます

まあともかく、先を急ぎ過ぎてはいけないのが盆栽作りですが、幼苗の時代に根と幹をある程度充実させておき
その後のサイズの短縮は切り込みの技術でカバーするが現代流でしょう

と云うわけで、今日のポイントは
舞姫挿木当歳苗は、二年目の春に植え替えせず、三年目に仕立て鉢に独立さる


右側が二年生苗、隣の仕立て鉢が今年の春に独立した三年生苗

この三年生苗だって、今年一年間は根付くためにエネルギーを費やしたため
成長の比率は二年目にははるかに及ばないことは画像から一目瞭然ですね

ですが、今年中で鉢内にかなり根が回ったはずなので
来年は著しい成長をとげるはずです

そして、立派なミニ盆栽になるためのトレーニングが始まるわけですが
それらはまたの機会に

では!

2014年10月15日水曜日

舞姫・取木の下準備

昨年の9月初旬に舞姫の種木を追加仕入したことは「つれづれ草」でご紹介しましたが
今日のつれづれ草はその記事を参照しながらご覧になって下さい

昨年9月に追加補充した種木は、ほとんどが取木用に針金で結束してあったんですが
そのコブ状のクビレの箇所に水苔を巻いて保護しておいたところ

去年は特に残暑が厳しく10月半ば頃まで気温が高かったせいでしょう
ほとんどが発根してしまいました

つまり、一年に2回も取木ができたという結果になったわけです
もちろん想定内のことでもあったので、秋の内に親木から取り外して仮植えのまま無事越冬しました

そういう事実もあるので、環状剥皮(かんじょうはくひ)による取木をするときでも
下準備の針金結束を施をお勧めします

で、今日はその下準備の効果のほどをお見せしましょう


盛夏のころに太幹の種木の上部を針金で結束
結束箇所の幹径は3.0cmで、舞姫もみじとしてはかなりの太さがあります

ただ、この箇所のさらに上部には、この春から入梅にかけ何本も取木をかけておいたので
夏以降も葉数がやや少なく、幹の太りが鈍ったため、針金がほとんど食い込んでいませんね

この感じだと、針金が食い込んで結束の効果が現れるのは
早くとも来年入梅前ごろまで待たねばなりません

もうちょっとの我慢なようです


さて、こちらは中ぐらいの太さですが、かなり食い込んでいますね

ちなみに、下の矢印(2)の部分の幹径は1.2cmなのに
上の矢印(1)の部分はすでに幹径1.5cmに太っているんです

このように針金の結束法は、発根の促進だけでなく
ゲットしようとする種木の根元にあたる部分を急速に太らせてくれる効果も絶大なんですね

こりゃ、やめられませんね!


こちらは細幹の様子

結束した上部には葉がたくさん繁っていたので
幹の太りが促進されてご覧の通りです


矢印上からの太さ(幹径)は

(1)は1.1cm
(2)は1.4cm(根元になる部分)
(3)は0.9cm

つまり、針金結束によって取木後に根元となる部分は
すでに直径で0.5cmも太くなっているんですね

これに加えて(2)付近からの発根により、さらに太りは促進されますから
元の太い堂々たる立ち上がりがさらに強調されるはずです

このように取木前の針金の結束による効果は、たんに発根が促されるだけではなく
ゲットする素材の優劣に深く影響するわけです

みなさんも優れた素材を求めるならば
このようにちょっとした心がけで可能性が大きくふくらみます

それでは、まずは実行ですね

2014年10月2日木曜日

舞姫超々ミニの作り方(足し算と引き算)

盆栽作り、特にミニ盆栽においては、そのボディーや枝作りの過程において
何時も同じような手入れや培養法をしていてはいけません

例えれば、不要枝さえ切らずに肥培してぐんぐんと成長を促す足し算的(できれば掛け算)の技法と
不要枝を外しながら抑制した培養を心がける引き算的の技法とをメリハリよく施してやりましょう



舞姫もみじ超々ミニ
葉先まで樹高3.5cm、おそらく3.0cmで完成するでしょう

まだ芯も役枝も長めですが、もう一年でさらに全体の輪郭はかなり小さくなります
それらの節間がつまっているので追い込みが可能だからです

現在の仕立鉢は間口6.0cm(2号)ですから
来春には1.5号鉢かそれ以下の鉢に入れるつもりです

この舞姫は今年の春から引き算的培養と手入れがされてきたわけで
来年以降のしばらくはそれが続きます



昨年の7月頃の姿(Part206のNo,26より)

この時期は春の芽の先端を摘まずに
伸ばしに伸ばしている足し算(掛け算)の時期でした

もちろん水も肥料もたくさんやってりますから
葉も大きく肉厚です



ボディーを拡大して見ます
枝数は少ないのですがマルマルと太い軸ですね

左の足元にちょっと大きめのキズ(灰色の癒合剤)があるので
これを埋めるためにも枝を走らせているんですね

まさに足し算的です



引き算の過程にある現在の姿をもう一度見てください
枝の太さや葉の大きさ、また枝の節間の長さなどが両者ではまったく異なっていますね



昨年7月時点での追い込みの計画図
おおよそこの通りに今春に実行し、その後に吹いた芽で現在の枝を形作っています

さらに、足し算的培養のおかげで
足元の傷もほとんど完治しました



赤点で示した枝や芽はほとんどが今年に吹いた芽です
春から入梅にかけての施肥も2回ほどですが、それもほんの少量でした(引き算的培養)



同じ画像ですが、見やすいように赤点をつけずにご覧にいれます

昨年に比べて幹筋は格段に太くなり、いわゆる幹味(みきあじ)が各段に向上しました
さらに、各枝の節と節の間(節間・せっかん)が短くなりなりました(重要)



来春には鉢をもっと小さくして赤線のところまで追い込みの予定
節間が短くなったので輪郭線はさらに小さくできます

これから数年は引き算的手入れと培養を重ね
化粧鉢の間口は3.0cm、樹高も3.0cm以内の超々ミニを目指します

以上ですが、とにかく盆栽は足し算と引き算の手入れと培養をうまく交互に繰り返して
メリハリよく作り込むことを覚えてください

では!