2015年9月25日金曜日

五葉松・根元の化粧について

先日さる愛好家さんから譲っていただいた五葉松
樹高は16.5cmほど、やや暴れた感じの足元の強い模様に特徴があります

五葉松の模様木というと温和でやさしい感じがイメージされますが
この木は山取りと見まごうほどに根張りと幹筋の野性味が半端ではありません

それでは、ゆっくりと全体の印象を鑑賞すると同時に
細部までじっくりと検証してみましょう


五葉松の命ともいえる葉性(はしょう)が満点で
色つやもよくヨレがなく短くしまっています

また、比較的大きめの鉢を使っているのに、幹筋に力があるためでしょう
鉢からはみだしそうな勢いが感じられてますね

ただ、ここで一つの見方として、上に強い曲がりがあるためか
赤矢印の部分がやや「元ぼそ」だと指摘されそうな気もします


そこで、赤矢印で示した部分に苔を張ってみました
すると足元の欠点はみごとにカバーされて「元ぼそ」には見えなくなりました

足元が安定し堂々たる力も感じられるようになりましたね
↓の画像は苔を張らない自然のままの状態です

如何ですか?
見比べてください、あなたはどっちがいいと思いますか?


こちらは苔を張る前の自然の状態

改めて眺めると、苔を張らないとたしかに「元ぼそ」と見るひともいるでしょうが
シャープで野性的、つまり作り過ぎない自然な感じが好きだという方もいるでしょうね

もう一度伺います
あなたはどっちが好きですか?

正直迷うところですね
このように、根元に限らず盆栽の化粧の限度は非常に難しいものです

やらなければ「山出し」、やり過ぎれば「没個性」といわれそうです

ちなみに、頒布コーナーへ苔を張って出品する場合は
同時に使用前の画像も添付すべきでしょう

あまりの厚化粧は詐欺になりかねませんからね
マジな話ですよ

では!

2015年9月23日水曜日

初級・中級盆栽集中講座(5):掘り出し素材の改作

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。
  • 時期:一年中
  • 適用樹種:全樹種
  • 目的:埋もれている盆栽素材を短期間に観賞価値を高め、立派な盆栽として育てていく(やりがいありますよ)
  • 道具:全て
  • レベル:超初級から達人まで、素材の魅力を見分ける眼力を身につけたら、安価で楽しめ、やめられない(成功した時の喜びは格別!)
  • ここがポイント
    • まず眼力を鍛えることが第一です
    • それには経験をつむことと
    • 名木をたくさん鑑賞すること(感心してばかりしていちゃあダメ!どんな名木でも自分のものだと思って遠慮なくケチをつける(口に出してはダメですよ)
    • そして、更に樹格を向上させるための問題意識を持つこと、ようするに鑑賞眼と批判眼とを調和よく鍛えるんですね

クチナシの小品盆栽・新しい正面さがし


伸び放題のクチナシ、足元と幹筋をみると、なんかものになりそうな雰囲気をもっている
いままでの正面の図
ちょつといい感じだが、向かって右の枝が胴の正面近くから出ていて、その奥のほんとうの一の枝が見えない
しかし、これを切ると傷になる
おもしろくない
他の正面をさがそう


グルグルまわして新しい正面をさがす
考慮に入れるのは
根張り
立ち上がりからの幹筋
枝順
それからもちろん、全体的な図です


ありましたよ、ありました
向かって左側面に、新正面らしき、イイ感じのところがみつかりましたよ
足元は抜群ではないが、幹筋はいいぞッ、頭まで筋が通るぞッ
枝順は問題なし
この正面なら幹に大きな傷をつくらなくてもイイ
ここに決めた!


さてと、一と二の枝の無駄な小枝を切って、幹筋がよく見えるようにしてみる
頭をいままでのと立て替えるので切ろう
旧の頭は新の頭の後ろになっているので
とばしても、正面の傷にならないので,グー!


旧の正面から見ると頭が有りません!
この角度は新正面の斜め後ろになっています


どうですか?
頭を切り替えがポイントで、その他は大きな枝を切っていません
これで盆栽としての基本がきっちり整った模様木になりました
裸になってますが、クチナシは芽吹きのいい樹種ですから
1~2年で吹き込みます
(時期が真夏なので、少しは葉を残しました、5~6月の適期なら葉は全部切ります)
植え替えは来春です

完成予想樹高はわずか9cmです
この寸法でこの幹の力なら、けっこう眺められますね

改作成功なので
盆栽市場へ売りに出しました
関心のある方はそちらへどうぞ

長寿梅の小品盆栽・足元を掃除するだけ



なにかいい雰囲気が匂うんで、買ってみました
現在、古いところが魅力ですが、株立ち状ではっきりした図が見えていません
なんかものたりない
思い切って
苔に覆われた部分はどんな風になっているのか、全容解明です!


なんと!なんと!
根上がり状に立ち上がった幹が横たわっていたのです
そこが苔に覆われて、株立ちにみえていたんですね
こんなにしっかりした幹が出現するとは、思いもしませんでした
感激!感激!
さっそく金ブラシでそっと掃除です(幹を傷つけないように)


掃除のあとは剪定です
枝が全体に上の方に向かっています、左右に張り出したように整えたいですね
まず向かって左の立ち枝をチョキン
これだけで木姿に動きが出るでしょう
ようするに、流れを作るんです


ゴチャゴチャした胴吹き枝を切り取って、幹筋をはっきりさせます
必要な枝を切らないように、事前によく検討してくださいね


どうです
だんだん図がでてきたでしょ
幹筋をはっきりさせて、枝の動きを調整していくと、構図が決まってきます
頭も詰めます


出来上がりました
針金も使っていません
ハサミだけで図が出ました
鉢が映ってはいませんが、根上がり状に立ち上がった幹が力強く屈曲して
最後に鎌首を持ち上げています
樹高わずか10㎝の長寿梅の小品が装い新たに、デビューしました

さて今後です
地面と平行している幹の部分が、ちょっと長いような気がします
丸か六角鉢に入れて、やや懸崖風に植え付ければそれも解消します
寸法が短くて古いので、かなりの盆栽に出世するでしょう



今日の講義はこれまでですが、いかがでしたか?
盆栽は永久に未完成です
その持っている個性を、充分に発揮しているものばかりではありません
せっかくいい素質を持ちながら、実力発揮できずにいる盆栽達は、たくさんいます
みなさん!まずご自分の盆栽達が実力発揮しているか、それからとりかかりましょう!
掃除ひとつで、再デビューできるものがあるはずです
この講義により、盆栽を見るみなさんの眼つきがかわってくだされば幸いです
ではまた9月にお会いしましょう

2015年9月17日木曜日

寒冷紗(遮光ネット)撤去

茨城と栃木を中心に甚大な被害をもたらした台風18号が去って
久しぶりに天気が回復した9月14日(月)、寒冷紗を撤去

悪天候が続き、特に9月に入ってからの日照時間が極端に短いので
盆栽たちの健康を心配していました

日照不足と湿度過多でカビが生えちゃいますよ
とにかく心待ちにしていた晴れ間です

さて、設置するときと違って撤去はわりと時間がかからないので
来年設置するときのために、とにかく丁寧な収納を心がけるのが大切なことですね

ちなみに、昨年の撤去日を調べてみると9月10日でした
それでも例年よりも10日ほど早いとありますから、今年は平年並みというところでしょう


朝から始めてお昼前にはすべての寒冷紗の取り外しは終了
あとは丁寧に収納するだけです


久しぶりに秋らしいさわやかな日差しです
あー、気持ちいい!


さわやかな天気で盆栽もよく乾いています


長雨でジクジクした天気、おまけに寒冷紗の下の薄暗い環境では
盆栽ならずともサッパリしなかったですね


そして最後の仕上げは、盆栽はもちろん鉢土や棚板にもよく染みるように
トップジンの1000倍液でたっぷりと消毒です

1週間ほど間隔をあけて次には害虫用消毒も必要でしょう
10月にも同じように1セットの予防対策をしてください

では

2015年9月16日水曜日

佐治川石が改めて教えてくれた「光陰矢の如し」

今日のつれづれ草のこの長い題名の理由は
先月の末に、顔知りのセミプロさんから水石を三点譲ってもらったところからお話しなければなりません

さて、それらの商談の中で話を聞いてみると、その三点はある方から販売を委託されたものだということです
そしてそのある方とは、私とも顔知りでそこそこの交際ある隣市のSさんだというじゃありませんか

「じゃあ宮本さん、Sさんに携帯して直に相場を交渉すれば」
と言ってくれたので、Sさんと電話で交渉して話がとんとん進んで譲っていただいたわけですが

翌日から我が家の座敷に置かれた幸太郎、佐治川、貴船の三点が目に入る度
なんか以前どっかでお目にかかったことがあると思えてならなくなったのです

思い出せないけど、どっかでお目にかかってる気がするな
最初はそんな気がするな程度だったんですが、そのうちにだんだん確信に近くなってきました

でもはっきりした記憶にたどりつけない以上は
ただただ漫然とながめているだしかできませんでした

そして数日の後、名石の採れる鳥取県の佐治川付近とは
どのような環境なのだろうかと、「佐治川石」と何気なくキーワードを入れてググってみたんです

すると検索の10位くらいに、「佐治川石の鑑賞」というページが出現しています
うーん、こりゃしめた、と思ってクリックして見るとなんだか見たようなページが現れました

よく見ると、2004/2/27の盆栽つれづれ草のページで
何と、この佐治川石を教材にして水石鑑賞の解説しているじゃありませんか

こりゃ、驚いた!びっくりした!

この佐治川石は以前私の所有物だったんだ
それも11年も前に!

ということで、私の気のせいは本物だったんですね
もちろんその証拠は出ましたが11年前の記憶は戻りませんがね

まさに「光陰矢の如し」
時間を大切にしなくっちゃ!

ということで、11年前と今の画像を見比べてみてください
気のせいか現在の方が時代感と色つやがよくなっているようですね


佐治川石正面


佐治川石正面


主峰あたりの拡大図


主峰あたりの拡大図


右の裾野あたり拡大図

今日はたいしたお話でなくて申し訳ない
ただ、11年という予期しなかった年月が

あまりに造作なく過ぎ去っていたことに
ちょっとばかりショックを受けたようです

そのきっかけを与え、時間の大切さを気づかせてくれた佐治川石に感謝して雑感のメモとしました

よろしく

2015年9月13日日曜日

舞姫の二代目親木(続)

2013/09/11のつれづれ草でご紹介した舞姫の二代目親木

計画では昨年中に新しい芯を呼び接ぎし
今年はその傷口の治癒に励みながら枝作りをしているはずでしたが

昨年樹勢をつけることに手間取ったのと、今年の春から上部の取り木にかかっていたため
政策計画はかなり遅れております


半月ほど前に上部の取木を切り離しました


計画は遅れましたが、上部の取木をやっているうちに
呼び接ぎで新しい芯を作る予定位置に新しい芽(左の赤点)が吹いてくれました、ラッキー!

おまけに2年前に10cmだった足元の左右(赤の左右)が
1cmも太って11cmになっていました、これも予期せぬラッキーです


矢印で示した左の枝が新しい芯になりますが
早ければ来年の入梅ごろに赤線の箇所からの切断が可能です

あらかじめ白点の位置に焼け込み防止用の枝を2~3箇所呼び接ぎしておく予定ですが
それらの活着具合によって幹の切り込み時期が遅れることも考えられます


正面の拡大図


枝配りの予想図

とにかくこの次の最大のポイントは
赤線の箇所の切り戻しと新しい芯を作ってからの幹筋作りです

この程度の骨格になるにはあと2~3年の年月が必要と思われます
みなさん、途中経過をお楽しみに!

2015年9月11日金曜日

秋の長雨と病害予防

半世紀近くも同じ業界にいると日本中といっては大袈裟ですが、少なくとも関東周辺であれば
その土地土地で名のある盆栽屋には一度や二度はたいがい訪ねています

今回台風18号の大雨で氾濫して甚大な被害が出た茨城県の常総市にも
業界最古参と自他ともに認めるTさんという業者がおられて、今年の春ごろ私は何十年ぶりに訪ねたばかりでした

鬼怒川が決壊した場所は、Tさんのところとはかなり距離があるようですが
とにかく何事もないことを祈りながら、テレビでニュースを見ていました


千葉県松戸市内でも、一時は大雨・洪水警報が発令されましたが
私の町は高台なので雨には強い


それに、今回の台風は雨の量は多かったですが
盆栽人のもっとも嫌う「風」は案外弱かったですね、これには助かりました


ご覧のように遮光ネットの乱れはなし、よかった!!


ところで、おおよそ一週間ほど秋の長雨が続きました
このように低温で多湿の環境は盆栽たちにとってあまりうれしくはありません

整理活動は鈍ったところへ、病原菌の活動は活発になりますから気をつけなければなりません
トップジンMやベンレートなどで殺菌消毒しておくといいでしょう


病気予防の消毒のポイントは、図のように枝葉がぐっしょりと濡れて
消毒液の滴(しずく)がたれるほどにタップリやることです

回数の目安は落葉までに2~3回
是非ともお勧めいたします

それじゃあ!

2015年9月8日火曜日

黒松秋の手入れ

愛知のKさんのご依頼で昨年の10月から管理している黒松
2年がかりで取木をし、昨年親木から切り離したそうです

発根の数は僅か1~2本だったようですが、ご本人がおっしゃるように、「素人の怖さ知らずというやつで、
思い切りよく切り離してしまった」のがみごとに功を奏したようです


2015/9/04撮影

今年は、去年松戸に来た時と同じ鉢で
そーっと根の充実を図った一年間でした

短葉法をかけられるほどには春の芽は伸びませんでしたが
短いながらしっかりした芽先です


健康チェックととtもに
改めて将来に向けての樹形を検討してみました

1 立ち上がりの動きと力

2 立ち上がりから芯に至る幹筋の動きやコケ順など 

3 枝順と枝配りのバランス

以上を考慮してあらかたの正面を決めておきます


正面予定位置からの拡大図
赤線は木の全面を邪魔する明らかな不要枝ですから、これを切ります


後ろ姿


枝先の本格的な追い込みは来年以後にやりますが
その前に、古葉の整理をして各枝の強弱のバランスを整えてやりましょう



ピンセットで抜かずに、小バサミで古葉の元を1~2ミリほど残して刈り込む


樹高はわずかに10cmぴったり
それにしても、いい足元ですね

スクールの常連のクロちゃんとトリくんはこの黒松を見て
「すっごい腕前ですね、まいった、まいった」としきりに感嘆していました


来年以後も根作りに励みながら骨格を充実させていきます
また、輪郭線の短縮も心がけます(小さくする)


後ろ姿

根作りがあるレベルに達するまでは、あまり強い針金かけは出来ないので
後ろ姿はまだまだ不自然なところがありますが、ここで焦ってはいけません

ここまでしんぼうしたのですから
じっくり腰を据えて本格的な整姿はもう少し先へ延ばします(一年以上)

2015年9月3日木曜日

五葉松病害予防の消毒

昨年の04/24に「五葉松復活大作戦」という題名でご紹介した五葉松
その後に請われて今ではトリクンの所有物です

さて、その五葉松がとても調子がいいんですよ!

今年は植え替えもせず、そーっと水をかけているだけですが
葉数も格段にふえて色つやもかなり濃くなってきました

ちなみに、肥料は春から油粕の固形を2回、虫害の消毒はを数回やった程度で
置き場は50%の遮光率の寒冷紗の下です


2015/09/03撮影


春の写真と比べると全体にかなり葉数が増え、緑も濃くなっています
ただ、下枝の一部はまだ弱いところもあって来季への宿題が残っています


白線で囲った部分が弱いんですね
葉の色も冴えないし、芽の力が十分ではありません

さて、この衰弱の理由は「葉ふるい病」とは思えませんが
やはり一応、病原菌予防の消毒もしておいた方がいいと思います

ところで、薬剤は何を使いましょうか?
五葉松の病気はほとんどカビ菌類によるものですから、それらに効きそうな薬剤を選びましょうね

それでは

五葉松の病害用消毒薬の一例
トップジン
キノンドール
ダイセン
ボルドー
アグリマイシン

2015年9月1日火曜日

水切れ出猩々その後

水切れで全ての葉が落ちてしまったが、幸い急性だったために再び新しい葉が展開し
ご覧のようにすっかり回復しました

その後は前項の最後でお話ししたように
高温多湿の時期にもみじ類がかかりやすいうどんこ病などから守ってやることが大切です

消毒薬は、私はトップジンを使いましたが
ダコニールなども一般的によく使われますね


入梅期から夏にかけての高温時期はうどんこ病などが発生しやすい
新しい葉が展開しはじめたら、根や鉢土も含めて秋までに数回の消毒をお勧めします


消毒のおかげで新芽や新葉がこのようにきれいに展開しています


このようなきれいな葉が展開しているときもちがいいですね!

よろしいですか?

うどんこ病などの消毒薬は「カビ菌」に効くやつを選んでください
「カビ菌」に効く農薬はたくさんありますよ

それじゃ、よろしく