2018年3月28日水曜日

太枝外しの下準備(呼び接ぎ)

写真の中央は小葉性の舞姫もみじの兄弟種の織姫もみじの太もので、高さは約16cmで足元の太さも直径6.0cmはゆうにあります。織姫としてはかなりのものなのでけっこう可愛がっているのですが、背中に外さねばならない太い枝が一本あります。

足元の幹径が6.0cm、外す枝のついているあたりの幹径が4.0cmくらいで、外すべき枝は直径2.5cmくらいです。

一発で切ってもうまくやればヤケないとは思いますが、ここは慎重を期して傷口にあたる周囲三ヶ所にヤケ留めの枝を接いでおくという慎重策をとることにしました。

作業1 発泡スチロールの板(厚さ4.0cm)に織姫もみじの鉢をしっかりと固定します。
作業2 左右に挿木三年生苗を寄り添わせて、これもしっかり固定する。挿木苗の徒長枝は、これを
    活用するために昨年秋から伸ばしたままです。

上からみるとちょうど3鉢が三角形の位置関係に置かれて固定されています。

作業3 切る予定の枝の元に、ノコギリで三ヶ所の溝を切る。
    溝の幅は2~3mmほどで、長さは1.0cm。
作業4 溝に沿って小枝を銜えさせます。
    クッションのついた細釘で留め、カットパスターで養生する。

赤矢印で示したのが挿木苗から呼んできた徒長枝で、緑色がクッションの付いた細釘です。ノコギリで溝を彫って、その溝に小枝を噛ませて釘で留めて癒合剤を塗るという作業です。

この位置からの方が分かりやすいですね。釘で囲まれた三ヶ所が傷口の円周になります。呼び接ぎで活着した枝を残しておけば幹の傷は肉巻きしやすいことになります。

裏から見た姿がこの画像です。左方向へ出っ張っているのが外すべき枝ということです。

早ければ入梅を過ぎるころが活着の予定時期ですが、気長に一年間待ちましょう。呼び接ぎは成功率の高い施術ですが、失敗の原因となるのは、ほとんどが辛抱できなかった場合です。

とりあえず次の予定は、入梅前後に太枝を切ることです。またご披露いたします。
では!

藪椿

日本人が大好きでよく知っているポピュラーな花木を挙げてみてといわれれば、椿はかなりの上位に入るでしょう。若いころにはあまり関心のある樹種ではなかった記憶がありますが、年とともにあのぼってりとした濃い緑色の葉と、その葉陰で秘めたように力を込めて咲く真っ赤な藪椿に魅力を感じるようになってきました。全体の濃い色彩から陽のイメージと思われますが、発する雰囲気はやや湿っぽい大人のイメージですね。

たしか北陸地方だったと思いますが、その地方の藪椿です。花は小輪で葉もよくしまっていて盆栽向きです。

盆栽の世界では特別に名前をつけなくとも「○○地方の藪椿」という呼び方がされます。自然実生なので自生する場所や気候によって少しずつ個体差があるので、余程の特徴がないと品種名をつけて区別をせずただ「藪椿」と呼びます。

持込による木肌の古色感も盆栽としての大切な要素です。灰褐色の木肌は落ち着いた雰囲気をかもし出して、なかなかの趣があります。

培養のポイント
1 植替えは春やや遅めの4月中旬以後が最適期。
2 植替えと同時(花後)に剪定を行う。
3 水も肥料もやや多めの管理をする。
4 冬季はムロに囲って管理する。

2018年3月23日金曜日

舞姫挿木後10日目

過去の参照記事 2016/04/06   ←クリック

過去の参照記事 2016/03/23   ←クリック

もう舞姫もみじの若い素材の数は十分に増えたし、これからは人差し指から親指くらいの太さの本格的模様木の素材作りを目標にしているので、今春の挿木は一時停止と思っていたのですが、何事も休むということは技術の停滞を招きます。言ってみると一流スポーツ選手なども、何度も同じことを繰り返して練習することによって、新しい発見や熟練に到達できるようなるのでしょう。

てなわけで今年も練習のつもりで、3月14日と15日に一尺のすり鉢型の仕立鉢6杯に目いっぱい挿木しましたが、活着率はめざましく上がったし、その後の培養法もうまくいっているので、張り合いがあります。過去の参照記事もご覧になってみなさんにも挿木をお勧めいたします。

我が家の挿木床は敷地の一番北側にある、あまり日当たりのよくない小さなビニールハウス。ここでポイントは、水のやり過ぎと消毒(殺虫剤ではなく殺菌剤)。挿木をしたときとその後の10日ほどの間の2回は必須。

今年は小粒の赤玉土単体でやりましたが、とのかく水はけをよくすることがポイントです。

用土の表面がさっぱりとしていますね。ここがポイントです。過水でつねに水分が多過ぎるとたちまち腐食菌が蔓延します。

中央の鉢の挿し穂はやや太めのものを用いました。この方が活着率がよければその方が後の生育もいいと思うので、試験的にやってみました。

そして最後のアドバイスは、挿木箱や鉢を地面よりなるべく高い所に置くこと。病原菌は地面にもぐっていますから、そこから遠い場所なら安全です。

そろそろ挿し穂の芽が動き出したものもあります。あと一週間を過ぎたころから少しずつ直射日光に当てようとお思います。

それでは!


2018年3月21日水曜日

掌上の舞姫もみじ

昨年の早春か入梅前に取木し、約1ヶ月で親木から外して秋までそのまま持ち込み、今春早めに根捌きして化粧鉢に入れてみました。

やや大き目の親木を選び、その上部をできれば2年ほど刈り込んでおいてから取木すると、あっという間にこのように掌(てのひら)に載る小さな盆栽ができるわけです。

舞姫もみじ超ミニ株立ち、樹高はわずかに5.5cm。舞姫は小枝の先が繊細なので、この状態からひと芽吹けばそれで十分愛らしい雰囲気が出て観賞に耐えられるから嬉しくなります。

もみじ類の株立ち状や寄せ植えのような多幹樹形は決して珍しくはありませんが、超ミニサイズでは単幹が主体で、温和なやさしい風景を演出する盆栽は案外少ないので、とっても貴重だと思います。

取木なので足元は案外に太くて逞しい雰囲気が見られます。鉢はなるべくこれより大きくしないようにして、こじんまりとさせて可愛さを強調しましょう。

この時点で骨格のデッサンは出来上がっているので、この先は枝先を徒長させないようにし、芽摘みと葉透かしを繰り返していけば、数年で柔らかく繊細な枝が見られます。ただし、葉刈りは行う必要はありません。

さあ、あなたも掌に載るほどに小さな超ミニ盆栽を作ってみましょう!

後姿です。この株立ちのような樹形は、表からも裏からも見られる場合があります。一席の飾りとして添え物として使う場合のことも考えて、表と裏の二刀流で作っておくと便利ですね。

2018年3月20日火曜日

大物唐楓

私の営業拠点である地元松戸市内には、昔からミニ盆栽の伝統が希薄で,どちらかというと大物盆栽嗜好の愛好家さんが多数派でした。それがこの10年来,愛好家さんの高齢化の影響などもあって、大き目の盆栽はかなり敬遠され手いる感じです。そう言う私ですらネットの商いに力を入れているせいもあって、ミニ盆栽中心の棚になっています。

とはいえ、あまり広くない盆栽置き場であっても、ネット商売に関係ないサイズ違いの太物や、背高のっぽの文人木なども日常の視野の中に存在していないと、なんとなく寂寥間を感じるときがありますね。盆栽人は贅沢にも無意識のうちに、いろいろなジャンルの盆栽に囲まれていたいんでしょうね。

まあ、そんな欲求不満を薄っすらと自覚しかかっている折柄、ある競り市で↓の車の中の唐楓にお目にかかったというわけです。樹高は70cmで左右の幅は80cmほど。幹の足元の直径は40cmくらいでしょう。

私の好きな樹種だしボディーや枝の筋も優等生です。競り負けないように腹に力を入れて気合よく落札しました。相場もけっこう手ごろだったのでご機嫌で鼻歌が出ましたよ(笑)

重量はどのくらいでしょうか?と問われれば、とにかく重い、と答えるしかありません。私らの年齢では二人で必死に持ち上げる感じ。油断すると怪我でもしかねないほどの重さです。

作風からしておそらく名古屋方面から持ち込まれたものだと思います。鉢の間口は75cm、樹高は意外にも70cmで納まっているのが嬉しいですね。ボディーの直径は楽に40cmくらいはあるでしょう。

ところで、なぜ車から降ろしてみなさんにご紹介しないかというと、重くてとても一人じゃ持てないからです(笑)。

敷いた毛布ごと荷台の後部へ引っ張ってきたものの、とても一人では無理。というわけで、日曜日のスクールに生徒さんが集まる日まで、車の中でキャンピングということになりそうです。

というわけで、一人で持ち運びのできない点は不便ですが、余程の練達の作り手が手を入れたものらしく、根は浅めのオカメ小判にピッタリと収まって傷なく、ボディーの模様も苔順もみごとです。枝は巧みに曲付けされて無駄枝はなく、毎年的確に剪定されていることがわかります。まあ、ボディーの数ヶ所に枝抜きの傷がありますが、それほどの苦労なく巻き切る程度のものですから、心配いりません。

それでは、車から降ろされて優雅な後姿もご披露できる日まで、しばしお待ちください!

2018年3月11日日曜日

山もみじ株立ち改作(植付け)


前項でお話したように左の枝というか寝かせた幹は切るつもりでいました。そこで、切る前にまずやることは植替えだと思って、上から3枚目の画像のように切立ちのオカメ小判を用意しました。

そして、根捌きをしたもみじとその鉢との相性を試しているうちに、株立ちの足元あたりの発達具合がいやに逞しくて魅力的に感じられるようになり、だんだんと切るのが惜しくなってきてしまったのです。

後姿


この画像が植替えのために根捌きを終えたところです。この時点で左の枝を切るつもりであったのが、だんだんと構想が違ってきてしまったのです。

具体的に言いますと、この株立ちはこちらのような大き目の鉢の方が映りがよく、木の迫力を導き出してくれるような感じがするようです。そして、足元付近もこころなしか迫力が増す印象です。

というわけで熟慮の結果、今回は切らずに今までと同じようなイメージで植えつけました。ただ心持ち高植えにしたので、地際に寝ていた幹は今までより露出しました。これで根連なりとか筏吹きとかの樹形のイメージはまったくしなくなりましたね。

左右に伸びた幹は今まで以上に、木の動きや表情を演出する役目が強くなった感じです。

後姿です。

後姿の拡大ズです。

そんなわけで、自身もまだきちっとした構想は固まってはいないので、このままもうしばらく木の充実を見てみたいと思っています。足元と左右の子幹の成長が全体のイメージに変化をもたらしてくれるような予想と期待を感じています。

では。







2018年3月6日火曜日

山もみじ株立ち改作(案)

今日取り上げる山もみじ株立ちの成り立ちを推測してみると、幹の芯の左右に閂状態に枝がある下から取木をして、それらを左右の地面に伏せ、さらに上に立ち上がった幾本かの小枝を幹に見立て、芯の幹を中心に配して総合的に株立ち状態にまとめたものです。

ですから、一応株立ちと名乗っていますが、これからもっと足元の甲羅が発達すれば甲羅吹きともいえるでしょうし、左右の端から端までの脇根が発達すれば、根連なりとも表現できるでしょう。

株立ち、根連なり、筏吹き、甲羅吹きなどの樹形は、その樹の成り立ちや成長過程の違いによって、どのジャンルに入るのか明確に区別できない場合もあります。ゆえに私はそのあたりのジャンルにはあまりムキにならないようにしています。

まあ、樹形のことは今日の本題ではありませんからこのくらいにして、話題を進めましょう。私は現在このもみじの改作の方向性で悩んで(迷って)います。

持込の古い、そして特に葉性(はしょう)のいい優良種ですが、主幹が真ん中の位置にあるので、左右が同じバランスで変化がないですね。

左右の変化を求めてどちらかを詰めるとすれば、それは赤印のある左だと思います。

試しに左部分を消してみると、主幹は大きく左へ寄った形になりました。そして右の数本の子幹にグッと動きがでてきました。

このように試しに画像で検証してみると、この形が正解のように思えますね。明日あたりにもう一度実物を見て決断を下しましょう。





2018年3月5日月曜日

冬芽の輝き

私はそれほどとは思っていないのですが、ほとんどの盆栽関係の方々は、この冬は寒かったとおっしゃる。このブログをお読みくださっているみなさんはどうだったのでしょうね?

なにはともあれ盆栽界では、国風展が終了するころになると新しい季節がやってきた感じがして、作業的にも植替えなどを意識するようになって、日一日と春の気分が濃くなってくるようです。

数日前に気がついたのですが、庭の冬囲いの中でも特別に風が当たらず日当たりのいい場所に置かれている紅千鳥の取木素材(樹高6.0cm)の冬芽が色づいて鮮やかさが増してきたようです。

冬のあいだ中、寒さや乾燥から芽を守るためにガッチリと自らをガードしてきた冬芽(ふゆめ・とうが)も、いい環境に馴染んでくると少しずつその堅いガードをゆるめてきます。

これから先の一ヶ月ほどは、一年中でも特別の季節です。たった数ミリほどのちいさな冬芽の色彩の変化にさえ心が動かされます。盆栽人はとってはとてもじっとしてはいられません!

2018年3月1日木曜日

植物の四季・形成層

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この一週間ほど、日中はけっこう春めいてきたのを感じることができますが、夕方の3時ごろになると急に気温が下がってきて、慌てて暖房のスイッチを入れる始末です。

人間様はこんな風にして、春よ来い、早く来いと毎日春を待っているのですが、盆栽たちはどのようにして季節の変わり目を過ごしているのでしょう。

挿木用種木の紅千鳥の庭木の無駄枝を切って水の内部を調べてみよう。

切り口の先端を切り出しで斜めに削いで、ビンに挿して墨汁を吸わせてみましょう。根から枝の先端へ水を運んでいる導管の流れの速度はわかりませんが、ともかくその様子を観察すれば、何かがわかるでしょう。

墨汁を吸わせてから約1時間経過したところで、液から抜いて先端をよく拭いてから斜めに切り戻しました。切り口の白っぽい円の周辺が形成層で、その内側の真っ黒な部分が導管のあるところですね。ということは、このように導管が真っ黒であるということは、盛んに水を吸っているということを現しています。

試しに最初に切り戻した吸い口の丈夫の表皮も削ってみると、少々ですがかなり上部の導管まで墨汁が吸い上げられているが見えます。

庭から切り取ったときの枝の表皮や冬芽はまだ霜焼けしていて、とても春が近い感じはしませんでした。ところがこの画像を見れば、木の内部にはとっくに春がやって来ていることが実感できましたね。

これを見て勇気が出てきました。さあ、みなさんも鉢や用の支度をして、春の作業にとりかかりましょう!