2017年8月29日火曜日

姫柿竹の子幹(ひめがき・たけのこみき)

竹の子幹(たけのこみき)とは、立ち上がりが太くて寸法が短くてコケ順の急な幹をいい
盆栽界においては総じて褒め言葉であり、優秀な個性を表す場合に用いられます

特に樹高の低い超ミニの場合は、この姫柿のように激しい模様が入っていれば
迫力あり、変化ありで、まさに鬼に金棒! 素晴らしい個性になります

いかがですか、 超ミニ大好きな愛好家さん
ほとんどの方は竹の子幹、好きですよね!?


やはりこの姫柿の竹の子幹も、数年間我が棚で暇つぶししていた素材ですが
先日棚掃除のおりに、暫くぶりで目と目が合って取上げたわけです



よくよく眺めてみると

1 激しく曲がった足元からてっぺんにかけても幹筋が素晴らしい

2 腕伸びしていますが、左右のいい位置に利き枝がついています

3 足元から中間の幹筋へと模様がきれいにつながり、その上の芯へと達する流れがいい

4 高さ7.0㎝の位置に新しい芽が吹いているのが、新しい芯です

など見どころもたくさんあって将来有望です


以前はこちらが正面だったような記憶がありますが・・・


赤点で示した不定芽が新しく芯となります
いい位置に吹いてくれました



1 新しく吹いた芽があと5mm下であれば言うことなし、とも思いますが
  まあ、それは贅沢というもので、人間様は勝手すぎると姫柿君に笑われるかもしれません

2 この芽の下部にも芽当たりが隠れているような雰囲気がありますから、僅かに期待はしておきましょう

3 左右の枝は運を天に任せて当てずっぽうに切り込みます
  このような場合でも、姫柿は不定芽が吹きやすいので心配要りません


来春の彼岸ごろに根をさばいて植替えをし
同時にボディーと利き枝の主要部を残して強く切り込みます

その後入梅前に、新しく吹いた不定芽に針金をかけて
樹形の基本を整えていきます

竹の子幹にこれだけの面白い模様が入っていて
傷っけも少なくて、何よりもサイズが7.0㎝の姫柿

貴重品ですね
頑張りまーす!

2017年8月26日土曜日

山もみじ超ミニ

およそ3年くらいは我が園の棚にいると思われる山もみじ
棚の掃除をしていたら、しばらくぶりで目に付いたのでとりあげて見た

たしか取木をした素材を友人から分けてもらったもので
足元はかなり太って木肌も古ぶるしく、すでに縦縞が出かかってきています

今は長方鉢に入っていますが、雑木なのでやはり色物の楕円鉢が似合うでしょうから
来春には鉢を替えてやるつもりです


見たところ、将来の幹筋と枝配りなどの基本を決める時期が来ていますね
さあ、どのような計画になるでしょう!?


向かって左側の太い枝を芯として採用することも考えられますが
真ん中の赤点付近に不定芽が吹くでしょうから、その芽を頂上の芽として木作りします

そうすると、左右の太めの立枝は不要になりますから
芽当たりの関節を残して追い込みます(左枝は元から切る)


(左枝は)切った枝元の細い枝を使います
(右枝は)来春以後に出る不定芽を当てにしています


新しい芯として採用する不定芽付近に、太めの不要枝があります
もちろんこれは切るんですが、来春のことにしますよ


葉を隠してボディーだけ見てみましょう、けっこう貫禄があってなかなかですね
切り込みによる古傷もすっかり癒えて、今ではかえって幹味となってイイ感じです



次の3点がポイントです

・左右にバランスよく利き枝があります
・後ろ枝もあるので姿に奥行きがあります
・芯となる芽は、間違いなく予定地ふきんに吹くと推測されます

そして楕円のやや浅目の鉢に入れてやれば
根張りが強調されてかなりの出世が見込まれます

よろしいですか、みなさん!

たまには、盆栽棚の隅で置き去りにされている盆栽くんと、目を合わせてあげましょう
気が付いてみるとしばらくみないうちに、案外にがんばって成長しているかもしれませんよ

それでは

2017年8月21日月曜日

雄山鉢真贋

最近手に入れた藤掛雄山鉢が
贋作であったというお話しをいたします

つい一ヵ月ほど前、しばらくぶりに立ち寄った親しい同業者から
分けてもらったものです

お店の床の間に置いてあったこの雄山鉢にお目にかかった当初は
かなり絵がまずいなあ、雄山としたら下位の作柄だなあ、と思ったくらいで大して関心は湧かなかったのですが

その後で何気なく聞いた値段がバカに安かったので
急に興味が湧いたのでした

商売人というのは卑しい生き物で(笑)、当たり前のものが当たり前の値段で売っていても
正直、ちっとも面白くは感じませんが、それが破格の値段となるとたちまち興味津々です

「安けりゃ絶対値切れ!」とばかりに
一生懸命に値切りにかかり

そして最後には
市価の三分の一まで値切り倒してしまいました

ところが、後になって振り返ってみると
この場合、普通取引の際に感じられる高揚感がまるでなしなんですね

そうなんです

盆栽屋が一番の幸せ感を感じるのは
自分の好みの商品を格安で仕入れられた時なんですが

金額にばかり目が向いている私は
一番に拘るべき品質には全く目を留めてはいなかったのですね

だから普段は感じられる喜びが
感じられるわけがありません

家に帰って冷静になった私の目には
この雄山鉢は、できの悪い偽物にしか見えなくなっていました

もちろん、これを売った同業者が悪いのではありません
彼ははっきりと、贋物だよねと言いながら安値を提示し、値切りにも応じた訳です

それを私が勝手に希望的な印象のもとで
自らの気に入った価格まで値切って商談したのは明らかです

だから皆様にここで私が言いたいのは、ものに安い高いはつきものだけど
もっとも大切なのは品質ですから、とにかく感動を伴ったいい買い物を心がけましょう、ということです


藤掛雄山・五彩外縁撫角長方  間口11×奥行き9.6×高さ3.8㎝

一見よくある雄山の五彩長方
ボディーの感じなどはまるで本物だ



正面の拡大図

アップで絵柄を見ると

1 真作に比べて描写力や筆致力などの不足が感じられる
2 青、赤、黄色など釉薬の鮮明さが物足りない
3 特に動物(馬)の描写に躍動感が感じられない


馬の描写が物足りないですね
雄山はこんな狐みたいな馬の顔描くかな?


反対正面

人物の配列にリズム感が感じられない


ボディーや土目からは贋作の匂いは希薄です


鉢裏と足の様子
落款からの決定的な判定も難しいと思われます

ですから、この鉢の場合は、雄山の通常作品における総合的な絵画力に重点を置いて鑑定した結果
真作とするには力量不足であると言わざるを得ないのです